2020年10月、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言。2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという、脱炭素社会の実現への一歩です。
今回はカーボンニュートラルを伴うグリーン成長戦略についてと、自動車メーカーへの影響を紹介します。
目次
脱炭素社会の実現に向けて①|グリーン成長戦略とは
誰もが一度は耳にしたことのある20世紀後半から顕著となった地球温暖化、また2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の教訓、様々な要因をきっかけにしてエネルギーや環境が見直されている今、2020年12月25日に採択されたのが「グリーン成長戦略」です。
10月に宣言をした温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を目標に置き、脱炭素社会の実現に向けた戦略会議の名称になります。
温室効果ガスとは
大気中には二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスという様々な種類のガスがあります。このようなガスは太陽からの降り注ぐ熱を地球に封じ込め、地球を暖める働きがあります。そのため、このようなガスのことを温室効果ガスと呼びます。
しかし、人間が暮らしていく上で必要となってくる多種多様な活動によってそれらのガスが増加し、延いては地球温暖化へとつながっていくのです。
特に石炭や石油などを燃焼させるときに発生する二酸化炭素は地球温暖化へと及ぼす影響がもっとも大きいとされています。
脱炭素とは
地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を防ぐため、石炭や石油を含む化石燃料から脱却することを指します。太陽光・水力発電、再生可能エネルギーの利用を中心にし、脱炭素社会を実現するのです。
このまま地球温暖化が進んでしまうと、熱波による死亡や疫病、水資源不足、農業生産減少など多くのリスクが待ち構えています。このリスクは全て世界の温度の上昇によって引き起こされる事柄です。
人間の生命維持活動を守るためにも、これからのわたしたちの暮らしを存続させるためにも、脱炭素ゼロの取り組みは必要不可欠と言えるでしょう。
脱炭素社会の実現に向けて②|2030年全ての自動車が電動車へ
グリーン成長戦略によって、トヨタ自動車をはじめとした多くの自動車メーカーはさらに背中を押されることとなりました。それは脱炭素社会の実現に向けた戦略の一つとして、2030年半ばまでに軽自動車を含んだ乗用車の新車販売を全て電動車(EV・FCV・HV※)へと変化させる取り組みのためです。
実は多くの自動車メーカーは、政府が発表をする以前より、古くから電動車への取り組みはスタートさせています。しかしながら、今回の発表を受けてさらに注力へと、多くの人から注目されるなど、自動車業界に大きな影響を与えました。電動車のみを製造・販売していく時代へと変わっていき、次第にわたしたちが暮らしの上で利用しているガソリン車は少なくなっていくことでしょう。
車を利用している人々、車が必要不可欠なタクシーや物流業界へは、ガソリン車から電動車への買い替えも含め、今後大きな変化が待っています。
※EV:Electric Vehicleの略、電気自動車を指す。
※FCV:Fuel Cell Vehicleの略、燃料電池車を指す。
※HV:Hybrid Vehicleの略、ハイブリッドを指す。
大手自動車メーカーの取り組み
◎愛知県豊田市のトヨタ自動車は2019年にEVの普及を目指した取り組みについて発表しています。
新車から排出される走行時のCO2排出量を2050年には2010年と比較した90%削減するという目標を長期的な目線を持ち掲げているのです。
参考:EVの普及を目指して
◎愛知県岡崎市に工場がある三菱自動車工業は電気とモーターで走行する「i-MiEV」シリーズに採用している電動化技術を、今後さらなるコア技術として位置づけ重点的に開発を進めていくそうです。
参考:電動化技術の開発
全ての自動車が電動車へと移り変わるのは、そう遠くない未来の話であり、それは今現在もスピーディーに進められています。わたしたちが知らない内に、車の未来がどんどん変化しているのが分かります。
電気自動車のメリットとデメリット
ここでは、人々の暮らしの上で今後は確実に的主流となるであろう電気自動車の現在のメリットとデメリットについて説明します。
◎メリット
- ・走行に伴うCO2の排出がゼロのため環境配慮につながる
- ・電気で動くためガソリン代が節約またはゼロになる。
- ・走行音が静かで周辺に配慮が出来、また振動も少なく、運転時に疲れにくい
- ・自然災害時に電源として利用でき、蓄電池として活用できる など
◎デメリット
- ・販売価格がガソリン車と比較すると割高感がある。
- ・充電に時間がかかり使い勝手が悪い※但し、急速充電であれば数十分、普通充電であれば数時間程度
- ・ガソリンスタンドのような充電スポットなど電動車に向けたインフラがまだまだ未整備
- ・航続距離がガソリン車よりも短く長距離運転に不安がある など
どんな事柄でもメリットがあると同時にデメリットも存在します。わたしたちの暮らしの上で、個人の利用しやすい方を選択する方法もあります。
しかし脱炭素社会の実現に向けて、電動車への移り変わりはすぐそこまで迫っています。 ガソリン車と比べると電動車は使い勝手が悪いのも事実であり、自動車の技術革新と同時に、社会全体のインフラを整えることが、普及促進のカギになりそうです。
名古屋の東山動植物園でも脱炭素化|東海エリア情報①
愛知県名古屋市にある東山動植物園では、使用電力の全てを再生可能エネルギー由来に切り替えることが決まりました。 自動車だけでなく、多くの企業や施設が脱炭素社会の実現に向けて動き出しているのが分かります。
東山動植物園でのこの動きは、その一歩と言えるでしょう。
トヨタが創るカーボンニュートラルな都市|東海エリア情報②
2021年着工予定のロボットやAI技術を駆使した未来都市「ウーブン・シティ」。 トヨタ自動車東日本株式会社東富士工場(静岡県裾野市)の跡地を利用し、建築家ビャルケ・インゲルスが都市設計を担当しつくりあげる新たな街です。
その街ではゼロエミッション(廃棄物を排出しないエンジン等の仕組みやエネルギー源のこと)のモビリティのみが走行する道が作られ、街の建物にはカーボンニュートラルな木材を利用し、屋根には太陽光発電パネルを設置する予定です。環境のことを考えたまさに未来都市が建築されようとしています。
まとめ
電動車にはメリットもデメリットもあり、まだまだ電動車を気軽に購入できる価格帯でないことも事実です。しかし普及に向けて国(環境省、経済産業省)や地方自治体が購入に関する補助金も実施されています。
2009年から日本の次世代自動車の年間販売台数は右肩上がり。実際に電動車を利用している人々は増えています。 脱炭素社会の実現に向けて、電気自動車を含んだ電動車の普及は必要不可欠です。世界中を走るガソリン車の全てが電動車に移り変われば、CO2削減に大きな影響を与えることでしょう。
その実現に向けて、多くの自動車メーカーおよびそれにまつわる自動車産業全体が今後さらなる電動化を進めること、そして自動化やシェアリングなどに「CASE」対応するため、「100年に一度の大変革」と呼ばれる自動車業界のビジネス構造が大きく変化する転換点を迎えています。
脱炭素社会の実現に向けたその動きは、自動車業界全体を大きく変えるきっかけにもなっているのが分かります。
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