皆さんは、秘書という職業について知っていますか?
ドラマや漫画で、社長に「そろそろ次の予定が…」と耳打ちする仕事が秘書、というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。
秘書とは企業の役員に当たる方々の業務のサポートをし、仕事を請け負う職務のことを指します。秘書の中には、経営幹部を補佐する「役員秘書」や研究者を補佐する「学者秘書」、医師を補佐する「医療秘書」など、さまざまな種類が実はあります。
今回はその秘書についてピックアップし、お話していきたいと思います。
目次
秘書の由来
秘書とは、中国の「漢書(かんじょ)」という、中国後漢の章帝の時に班固・班昭らによって編纂された前漢のことを記した歴史書が語源とされています。この歴史書では宮中で管理された蔵書のことを指しています。また、日本でも平安時代に「秘書」という言葉を見ることができましたが、文字の意味そのままの、秘密の書であるという意味として秘書という言葉が用いられていたようです。
この時代、秘書という言葉は「職」や「人」を表してはいませんでした。
秘書という言葉が職業名として使われるようになったのは、明治時代…金融機関で採用されたことが発祥です。この頃は欧米から様々な文化や技術が入ってきた時代でもあり、外来語もその一つです。その中で、社長をフォローする職業のことを「secretary(セレクタリー)」と呼んでいました。その言葉を「秘書」という意味で日本語訳したことから始まり、大正時代には秘書という言葉が定着したと言われています。
【参考文献】
・秘書:語源由来辞典
秘書ってどんな仕事をするの?
秘書は上司が滞りなく、果たすべき役割に専念できるようにサポートをすることが第一の目標となります。
◎スケジュール管理
秘書の第一の目標を完遂するために必要なことは、上司のスケジュールを管理することから始まります。これは上司が効率よく仕事を進められるように、必要不可欠な事柄ですね。
社内、外部で行われる会議を把握し、移動する時間を調整する必要があります。出張時に発生する公共交通機関や宿泊施設の予約もスケジュール管理の一つとなってきます。
また、突然発生することもある緊急度の高い案件が入った場合の、即時の対応能力も必要となってくるかと思います。
◎電話・メール・来客対応
たくさん送られてくる上司宛のメールの内容を確認し、必要なものは報告し、不要なものと分別する。電話についても取次ぎをしたり、上司の指示に従い電話の内容に対応したりしていくことがあるでしょう。
また、訪問者がいらしたら、正しい礼儀作法で迎えることも必要となってきます。
応接室の清潔感にも気にしなければいけませんし、応接室までの案内、お茶出しまで、気を配らなければいけないことは多くあります。
◎資料作成、雑務
会議などで使用する資料作成はもちろん、上司が作成した資料の添削も行うのが秘書の仕事です。また社内で必要となる報告書や通達などを担う場合もあります。
そして上司が仕事をスムーズに進められるように、身の回りの環境を整備することも業務の一つとなってきます。例えば会議資料のファイリングや備品の配置まで、幅広いフォローを求められることでしょう。
「こんなことまでしなくていいかな?」というレベルまでサポートし、気遣いを大切にしていくと、頼られる存在になるのではないのでしょうか。
その他にも社内のイベント行事のフォローや他部署のサポート、総務、人事、経理のような業務も対応していくかもしれません。
大手企業、中小企業と言った企業の規模によって業務の幅は変わってくるでしょう。
秘書になるための資格
「秘書技能検定試験」という民間資格があるのを知っていますか?
いわゆる「秘書検定」というものです。秘書検定では、一般的なビジネス文書やマナーを中心としたコミュニケーションスキルに対する試験問題が出ます。秘書検定を取得していなくても、秘書という職に就くことはできます。
ですが、経営を支える重要なポジションで活躍している方々をフォローする立場であることを理解し、社会において大切なビジネススキルを兼ね備えていなければいけないことを考えると、秘書を目指している方にとっては取得しておいて損はない検定だと思われます。
また、一般事務を始め、その他の職種に就いている方でも、ビジネスマナーを身に付けるために取得しておいてもとても役に立ちます。
秘書とは遠い、製造業などの技術職の方でも、会社が推進して取得されている方も中にはいらっしゃるみたいです。
この機会に、秘書に興味がある方、ない方も取得を目指してみてはいかがでしょうか。
秘書になるために意識すること
前述した通り、秘書とは経営を支える重要なポジションをサポートする、社内では不可欠と言える職種になります。そのため、秘書は幅広い業務を担わなければいけません。
必ず必要となる書類を処理する能力はもちろん、上司、またはその上司と関係の深いお客様や企業に対してよりよい関係を築くためのコミュニケーション能力は特に必要です。ちょっとした雑務でも嫌な顔をせず、むしろ指示をされる前に気付いて行動を起こし、上司から「あなたがいて良かった」と思われるような存在となりましょう。不愛想な表情では上司やお客様に良い印象を与えることはできません。常に明るく丁寧に、礼儀正しさが求められます。
最後に、これは一番重要となる事柄でしょうか。
「機密」を保てるかどうかです。企業が画策している情報を外に漏らしてしまったり、会社の風評被害を流してしまったりすることは秘書としては絶対にやってはいけないことです。 もちろん、会社に属する人間にとって、虚偽を外に発信することはしてはいけないことですが、上司を支える重要なポジションである秘書は、特に企業の秘匿情報にも触れる機会が多いでしょう。機密事項は外部に漏らすことせず、業務を遂行しましょう。
企業が求める「秘書」とは
世の中には多くの秘書の求人や、秘書という人材を求めている企業が存在します。そんな秘書の求人と密接に関わったことのある転職のプロ「転職エージェント」から企業が求める「秘書とは」何であるかをお聞きしてみました。
「企業からは“秘書がやりたい!”という人は合わないと良く言われます」
その言葉の真意とは、未経験で秘書がやりたい人のイメージは大手の秘書のイメージになっていると想定されるからだそうです。
前述した通り、企業の規模にも左右される業務内容ですが、秘書は基本的には「何でも屋」にならなければいけません。経営側のフォローだけではなく、他部署のサポートを見つけ対応をしていくのも秘書の仕事の一つ。
「誰かのために仕事がしたい」
このような考え方を持つ方には「秘書」という職業はあっているのだと思われます。
秘書のやりがい
経営者と距離が近く、請け負う業務はその経営者のフォローとなる事柄が多くなるでしょう。
会議で重要な資料の準備や細やかな気遣い。全てが経営者の仕事がしやすい環境をつくるための一つです。だからこそ経営者からの「ありがとう」の言葉は人一倍嬉しい5文字なのです。感謝の言葉を受け取ることが、まずは最初のやりがいに繋がります。
それをきっかけに、「もっと頼られたい」「もっとスキルを上げたい」という目標の設定や「これからも頑張っていこう」という自信にも影響してくるのではないでしょうか。 スタートラインからの道のりを描き、次のステップへと進むためのきっかけにもなります。
多くのことを学び、知識を得て、経験を積んでいくことができ、経営サイドを支える一人として、経営の目線を持つ一人として、大きな達成感を得ることができます。
秘書の厳しさ
厳しいことを言えば、「秘書」というステータスに最初は惹かれる方も多いかもしれません。 しかし秘書という職業は、仕事を構成する5W1H全てに気を遣わなければいけない仕事でもあります。
仕事を構成する5W1Hとは… Where:どんな会社で、What:どんな商材で、Who:誰と、How:どうする、When:どのくらいの時間、Why:何のために。
経営者とお客様との間での板挟みになるポジションであると同時に、経営者と同じ目標を持って企業成長へと貢献していかなければいけません。与えられた業務をするだけでなく、常に経営者と同じ立場や目線に立ち、時には経営者に口添えをしないといけないタイミングも現れます。
つまり経営者のいわゆる右腕のような存在にならなければいけません。
社会情勢は日々変わり続け、当初掲げていた経営目標ですら変えていかなければいけない状況下にもなる時がいつか来るかもしれない。そんな時、いかに経営者の最大の理解者となり、柔軟に物事を受け入れていけるかが鍵になるのではないでしょうか。
秘書になるにはどうすればいいの?
秘書とは、幅広い業務を担います。また経営者という重要なポジションに位置する方々と出会う機会が多いでしょう。高度なビジネスマナーが求められます。
なので、新卒で秘書として採用するというのは、多くはありません。事務職として入社し、経験を積んでから秘書に異動する場合や、秘書経験のある方を中途採用したりすることが多いです。
ですので、秘書を目指している方は焦らず、今自分自身が出来る最良のことに精一杯向き合い、幅広い経験を積んでいくことが、秘書になるための最短の道のりなのではないでしょうか。
【参考文献】
・秘書になるには?仕事内容から適性、メリット・デメリットまで
https://townwork.net/magazine/job/expert/o_expert/52773/#01
・秘書ってどんな仕事内容なの?