人は生きている限り、医療という分野に何らかの関わりを持ちます。
病気や怪我で病院に通う人もいれば、実際に医療の現場で働いているという人もいるでしょう。
医療は古くからある技術ですが、我々の見えないところで日々新たな医療技術が開発されています。
医療機器の開発が進めば、一昔前までは治せなかった病気や怪我が治せるようになったり、苦痛を伴う検査や治療をなくすことができるかもしれません。
本記事では、医療分野における最先端の技術開発トレンドについて紹介していきます。
目次
服を着たまま心電図が図れる「室温動作 36 チャンネル心磁図計」
健康診断などを通じて誰もが経験したことがあるであろう、心電図測定。
心電図は肌に直接センサーを取り付けて測定するため、基本的に服を脱いで裸になる必要がありました。
「服を脱ぐ」という患者の負担を減らすため、九州大学大学院総合理工学の研究グループは、服を着たままでも心電図が計測できる「室温動作 36 チャンネル心磁図計」を開発しました。
室温動作 36 チャンネル心磁図計の仕組みは高次元の磁界センサーを用い、心臓の神経に流れる電流を計測するというものです。
まだ研究段階で医療の現場には導入されていませんが、実用化されれば心電図測定における患者の負担を大きく減らすことができます。
手術支援ロボット「Da Vinci(ダヴィンチ)」
ダヴィンチはアメリカのインテュイティヴ・サージカル社が開発した内視鏡手術を支援するためのロボットです。
操作自体は医師が行いますが、人間特有の手ブレなどを防止でき、極めて精度の高い内視鏡手術を行うことができます。
ダヴィンチは日本においても既に多くの医療機関で導入されています。
現在も新たなバリエーションのロボットの開発が進められており、これまで困難だった手術も将来はロボットが可能としてくれるかもしれません。
3Dプリンターによる人工心臓の造形
チューリッヒ工科大学のStuart Williams氏の研究チームは、3Dプリンターで人工心臓を作る研究を進めています。
もし3Dプリンターで作った人工心臓が本物の心臓と代替可能となれば、心臓移植の際にドナーを探さずとも患者に最適な心臓を提供できるようになります。
同研究チームは2023年までに本物の心臓と代替可能な人工心臓を製作できるようにするとしていますが、もし実現すれば医療分野における大きな進歩となるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群を防止する「Night Shift」
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気のことです。
睡眠時無呼吸症候群の原因は様々ですが、仰向けで寝ている人に発症が多いと言われています。
そこでアメリカのAdvanced Brain Monitoring社は、振動で寝返りを誘導する医療機器「Night Shift」を開発しました。
Night Shiftの使い方は寝る前に首に巻いておくだけであり、仰向けで寝ていることを感知すると、寝返りを自然に促してくれます。
またNight Shiftには睡眠の質やいびきの大きさを記録する機能も備わっており、Web上から医師にデータを送信して治療のアドバイスを受けることができます。
まだ日本には上陸していませんが、もし日本の一般家庭で普及すれば睡眠時無呼吸症候群による死亡事例を大きく減らすことに繋がるでしょう。
スポーツにおける脳しんとうのリスクを回避する「FITGuard」
スポーツにおける脳しんとうは、死亡や後遺症のリスクもある危険なケガです。
アメリカのForce Impact Technologies社は、試合中に接触や転倒があった際、振動の度合いから脳しんとうのリスクを計測するマウスピース「FITGuard」を開発しました。
マウスピースとして口に挟んでおくことで、振動を加速度センサーで感知し、危険が生じそうな場合は即座にコーチや医療スタッフに通知が送られます。
格闘技などの危険が生じやすいスポーツで普及すれば、脳震盪によるリスク回避として大いに役立ちます。
スマートフォンとAIを組み合わせた歯周病予防技術
東北大学とNTTドコモは、スマホを使った歯周病発見AIの開発を2019年4月より開始しようとしています。
歯周病発見AIとはスマホで自分の歯を自撮りすることで、AIが歯周病のリスクを判定するというもの。
画像から歯茎の色や形状認識し、これまでの症例や専門的知見と照らし合せて解析を行います。
2022年をめどに実用化を目指すとのことですが、もし普及すれば歯医者に行かずとも歯周病を発見できるようになるかもしれません。
まとめ
本記事では医療分野における最先端の技術開発トレンドについて紹介しました。
医療機器の技術開発は今この瞬間も世界中で推進されており、数年後には本記事で紹介したものよりも、もっと驚くべき技術が誕生していることでしょう。
現代の医療の常識は、技術の進歩で簡単に塗り替わっていくはずです。
【参考文献】
・九州大学 PRESS RELEASE
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/6003/2015_10_26_1.pdf・インテュイティヴ・サージカル社 Da Vinci
https://www.intuitive.com/en-us/products-and-services/da-vinci・ETH Zurich Testing a soft artificial hear
https://www.ethz.ch/en/news-and-events/ethnews/news/2017/07/artificial_heart.html・Advanced Brain Monitoring社 NightShift
https://www.advancedbrainmonitoring.com・Force Impact Technologies社 FITGuard
https://www.fitguard.me・MONOist 「スマートフォンを活用した歯周病発見AIの共同研究を開始」https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1903/15/news048.html