商品を生み出し、世に商品を送り出すメーカー・製造業は、就職先・転職先として常に人気があります。
中でも「企画職」「設計職」「研究・開発職」はモノづくりが好きな方には関心が高く特に人気職種といえるでしょう。
これらの職種に就くには知識や経験が求められ、無から有を生み出す為のアイデアを創出し、研究を重ね、成果を形にするのが仕事です。
しかし、いくらよい製品を開発しても、限られたコストや時間の範囲で製造できなければ意味がありません。
こうした現場で欠かせない存在であるのが「生産技術職」です。
1つの商品(製品)の生産にかかる予算や時間、材料調達などのコスト管理を行うことで製品や部品を効率的に量産させる役割を担っています。
さらに、生産ラインにトラブルが発生したときは、原因を究明して復旧したり、生産ラインの仕組みを整えたりするなど、課題発見や改善を行う、メーカー・製造業にとっては“命綱”として重要な役割を持つ職種なのです。
今回はそんな【生産技術職】のキャリアプランについてフォーカスしてご紹介していきます。
生産技術職ってどんな仕事?
生産技術職のキャリアプランを確認していく前に、まずは生産技術職のことを改めて理解していきましょう。これまで生産技術職としてキャリアを積んできた方も、生産技術職に興味がありこれから携わっていきたいと考えている方も、ぜひ参考にしてみてください。
生産技術職の具体的な仕事内容
生産技術職は、「品質」と「効率」の双方をバランス良く高めることが求められます。
例えば、短期間に多くの製品を製造できれば、生産効率は上がりますが品質は落ちやすくなります。一方で、製品の品質を高めようとすると1つ1つ丁寧な対応が必要になることから生産数が落ち、収益性の低下と納期に間に合わないリスクが生じる可能性があります。
だからと言って「品質」と「効率」どちらかをおろそかにすることは企業としては許されません。
そこで生産技術職は、高い品質と効率のよい生産の両立を実現させる為に、工場内の設備や備品の配置を調べ、動線をチェックし、現場で働く従業員からの聞き取りを行います。
それらを基に生産ラインに生じている非効率な部分などの情報を集め、不備や不良などの課題を発見することが生産技術の重要な業務の1つです。
また、発見した課題を解決する為に、関係者に改善を提案していきます。
生産ラインに大規模な修繕が必要と判断された場合は、スケジュールを組み、生産に大きな支障がないように計画的に進めていく必要があります。
さらに修繕で必要な資材や器具の決定から修繕作業や稼働テストの指揮など、工場が早期に稼働できるような体制を整えることも生産技術職の仕事です。
工場全体を常に把握し、最善の状態を維持することが求められる大変な仕事ですが、「品質」と「効率」そして従業員のことを第一に考えた業務を行うことで、現場で頼られる存在になれるでしょう。
このように、工場の全体像を把握している立場の生産技術職は、生産ラインの運用責任者、さらに工場長などの重要ポストとしてキャリアを形成できる可能性も高く、メーカー・製造業での活躍が大いに期待されています。
生産技術職は縁の下の力持ち
海外へ進出しているメーカー・製造業での生産技術職は、世界基準で見てもクオリティが高いと言われる日本独自の生産手法を現地の従業員に伝授することも業務に含まれることがあります。つまり生産技術職は国内のみならず、海外でも活躍できる可能性があるわけです。
しかし、日本独自の品質の高い生産手法は現地の従業員にはなかなか理解されなかったり、実行に移せなかったりするケースもあるといわれており、難しい一面もあります。
海外の工場で生産技術職を任された場合は、現地従業員の個性や国民性を把握した上で、製品の品質やコスト意識、納期を厳守することの大切さを粘り強く伝えていく必要があるでしょう。
それを乗り越えた先で、生産が軌道にのれば、工場のみんなと喜びを共有できる魅力があり、それがこの職種の醍醐味といえるでしょう。
このように、生産技術職は多くの国や企業に向けて、安価で高品質な製品を提供する一端を担う重要なポジションです。
生産技術職の実際の業務は外には見えない内容ですが、工場から出て行く製品は、世の中で普及している物や人々の生活に役立っている物なので「縁の下の力持ち」として活躍の場が広い職種です。
生産技術職に必要な能力
生産技術職は比較的経験や知識が必要な職種といえます。
それとは別に、生産技術職を担当する方が求められる能力を3つご紹介します。
■調査力
生産工程を改善する為に、新しい機会を導入する際には、作業に係る時間が短縮されているか、効率は落ちていないか、費用が少なくなっているか、品質は落ちていないかなど、色々な角度から考え調査する力が求められます。
■論理的な思考力
生産技術職は生産現場における「品質」「効率」の点で、常に最善であることが求められるため、改善すべき点や不具合を単に発見するだけではなく、「論理的思考」で原因を突き止める能力が必要になります。
■計画力
新製品生産の為のラインの導入や、生産ラインの修繕が必要になった場合、予算や期間に制約が課せられる為、計画立てて業務を遂行する必要があります。限られた設備や人員でいかに効率よくその計画を進められるかが求められます。
生産技術職で活かせる資格
上述した通り、生産技術職はメーカー・製造業にとって重要なポジションでもあることから、様々な能力が必要になります。
生産技術職で早期に活躍したい人は、下記のような所持しておくと良い資格やスキルもあります。
生産技術職は治具の設計なども担当することがある為、CADが使えるように「CAD利用技術者試験」に合格しておくと有利でしょう。(ただしCADには2次元CADと3次元CADのどちらが実務で必要なのかは企業次第なのでご注意ください)
また、生産技術の職務では様々なデータを取り扱うので、表計算ソフトなどの基礎技術の知識やさらに上を目指すのであればプログラミング知識があると業務に活かせるでしょう。
製造現場での経験者は「玉掛技能」や「クレーン運転技能」知識が活かせますし、他にも機械・電気に関する資格や設計の図面を見て理解することができるスキルがあると生産技術職へのキャリアアップのチャンスがあります。
生産技術職ならではの職務経歴書の書き方
転職活動で避けて通れないのが「職務経歴書」です。
生産技術職の経験者であれば、業務内容や経験期間、そこでどのような技術を身に付け、それが応募企業でどのように活かせるのか、できるだけ具体的に記載するようにしましょう。
そうすることで、即戦力として貢献できることをアピールできるのでおすすめです。
また、生産技術職は未経験であっても、社員の管理や指導などのマネジメント経験、社内外問わずコミュニケーションによって利害調整などを行った業務経験などを記載することで、適正をアピールすることも出来ます。
生産技術職のキャリアプラン
生産技術職は、製造現場の効率化や品質向上を支える重要なポジションです。長いキャリアの中で、現場の実務から管理職、さらには経営に近い役職まで幅広い役割が期待されます。これからのキャリアを見据え、各時期における成長と目標を明確にすることが大切です。本記事では、生産技術職のキャリアを1〜20年目の期間ごとに分け、それぞれの段階で求められるスキルや経験を解説します。
入社1〜5年目
キャリアの最初のステップとして、入社後は工場実習や基礎研修を通じて生産技術の基本を学びます。
・実践的なスキル習得
生産工程や機械操作を理解するため、現場での実務を経験。
・プロジェクトへの参画
早期から小規模なプロジェクトに関与し、新しい生産工程の開発や改善を手がけることも。
・折衝力の向上
品質管理や製造部門との連携を通じ、コミュニケーションスキルを磨く。
・自己成長
技術や知識を深めるため、学習を習慣化し、新しいスキルを積極的に習得する。
この時期は、幅広い業務経験を重ねながら、将来の基礎を築く重要な期間です。
入社5〜10年目
経験と実績が蓄積され、キャリアの転換点を迎える時期です。
・キャリアアップの機会
他部署への異動や新たな役割に挑戦することで、視野を広げる。
・リーダーシップの発揮
係長などの役職に就き、部下の指導や教育に携わる。
・技術の深化
専門分野でのスキルをさらに磨き、現場での課題解決能力を強化。
・新たな挑戦
リーダーとしてプロジェクトを牽引し、成果を上げることで信頼を築く。
この時期には、自己成長だけでなくチーム全体を見渡す力が求められます。
入社10〜15年目
この時期には、マネジメント業務が本格化します。
・管理職としての責任
課長などのポジションで、部署全体を統率。
・チーム育成
若手技術者の育成や、現場の士気を高める役割を担う。
・クライアント対応
顧客との関係を構築し、トラブル対応や調整を行う。
・柔軟な対応力
現場の状況に応じた判断と、全体を見据えた指示が求められる。
この時期は、技術者からリーダー、そして組織全体を支える存在へと成長する段階です。
入社15〜20年目
キャリアの集大成として、経営層に近い役職に就く可能性が出てきます。
・全体の統括
部長や工場長として、部署や工場全体の運営を担う。
・戦略的な視点
全社的な目標に貢献するための計画を策定し、実行する。
・実績と評価の重要性
これまでの成果が評価される時期。リーダーシップと信頼が成功の鍵。
・さらなる高みへの挑戦
事業部長や本部長など、より上位の役職への道も視野に入れる。
長いキャリアを通じて培ったスキルと経験を活かし、組織全体を支える重要なポジションを目指す時期です。
生産技術職のキャリアアップ方法
生産技術職は、現場の効率化や新しい技術導入など、多岐にわたる業務で製造業を支える重要な役割を果たします。そのため、スキルや知識を磨きながらキャリアアップを目指すことが、より魅力的で充実したキャリアを築くための鍵となります。
ここでは、生産技術職のキャリアアップを具体的な方法に分けてご紹介します。それぞれの選択肢を知ることで、自分に合ったキャリアの道筋を描く参考にしてください。
実績を積んでキャリアアップをする
生産技術職の王道ともいえる方法が、現職で実績を積み重ねることです。
・プロジェクト成功への貢献
工程改善や新技術の導入などで具体的な成果を上げる。
・専門性の向上
特定の分野でスキルを深め、他の社員から頼られる存在になる。
・リーダーシップの発揮
チームをまとめ、後輩の指導や育成に力を入れる。
社内で信頼を得ることで、昇進や新しい役職への抜擢が期待されます。
海外に挑戦!グローバルな場でキャリアアップをする
海外工場や国際プロジェクトへの参加を通じてキャリアの幅を広げる方法です。
・国際感覚の習得
異文化理解や語学力を磨き、グローバル人材として成長。
・海外拠点での経験
現地スタッフと連携し、現場運営や技術移転を担う。
・新たな視点を得る
国内では得られない視点を養い、将来のキャリアに活かす。
世界を舞台に活躍することで、キャリアアップの大きなチャンスをつかめるでしょう。
上流の工程を目指して転職してキャリアアップをする
製造業の中でも企画や設計など、上流工程への転職を目指す方法です。
・企画・設計への移行
製品の構想や設計に関与することで、技術をさらに深める。
・業務の多角化
新たな領域への挑戦により、スキルの幅を広げる。
・将来の選択肢を増やす
多様な経験を積むことで、長期的なキャリアの可能性が広がる。
上流工程に関わる経験を持つことで、さらなる市場価値を高めることができます。
異業種にチェンジ!幅広くキャリアアップをする
異業種への転職は、新たな視点やスキルを得るチャンスです。
・異業種での応用力
生産技術職で培った改善能力やプロジェクト管理スキルを活かす。
・成長分野への参入
AIやロボット開発など、将来性のある業界でキャリアを築く。
・柔軟性の向上
幅広い経験を積むことで、多様な状況への対応力が向上する。
異業種への挑戦は、キャリアの幅を広げるだけでなく、個人としての成長にもつながります。
ポイント!自分のキャリアプランを描くために考えること
キャリアアップの第一歩は、自分自身の目標を明確にすることです。
・自己分析
自分の強みや価値観、将来のビジョンを理解する。・情報収集
業界動向や職種別のキャリアパスを調査し、現実的な目標を設定する。・行動計画の作成
短期・中期・長期の目標を設定し、具体的な行動に落とし込む。計画的にキャリアを築くことで、より満足度の高い未来が実現します。
生産技術職の将来性
生産技術職は、製造業界において中核的な役割を担い、時代の変化とともにその重要性がますます高まっています。特に近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI技術の進展、そしてグローバル化の加速により、生産技術職の活躍の場はこれまで以上に広がりを見せています。本記事では、生産技術職の将来性について、3つの重要な観点から解説します。
DX化が進む製造業界を支える
製造業界では、DXの推進により、スマートファクトリーや自動化設備の導入が加速しています。このような変化の中で、生産技術職は新しい生産方式の設計や、既存設備へのデジタル技術の統合を通じて重要な役割を果たします。
たとえば、IoTを活用した生産ラインの監視システムや、データ分析による効率化の取り組みがその一例です。また、DXの成功には、デジタル技術だけでなく、現場の知識と実務経験を基にした実現可能な改善案が欠かせません。そのため、生産技術職はこれからも業界を支える基盤として高い需要が見込まれます。
AI時代を勝ち抜くためにニーズが増大
AI技術の進化は製造業に新たな革新をもたらしています。AIを活用した予測保守や生産計画の最適化、ロボットの活用による自動化が進む中、生産技術職はこれらの技術を現場に適用する際のキーパーソンとなります。
特に、AIを導入するためには、実際の製造現場における課題を理解し、それに適応したソリューションを設計する能力が必要です。AI技術そのものを開発する専門職とは異なり、実際の生産現場での応用を担う生産技術職の価値は、これからさらに高まるでしょう。AI時代を勝ち抜くために、業界全体で生産技術職への期待が膨らんでいます。
海外でも欠かせない重要なポジション
製造業のグローバル化が進む中で、生産技術職は海外でも不可欠な存在となっています。日本企業が海外に生産拠点を拡大する際、現地での技術移転や効率的な生産ライン構築を担うのは生産技術職です。
さらに、異文化でのコミュニケーション能力や現地の労働環境に合わせた柔軟な対応力も求められます。特に、海外での経験を積んだ生産技術職は、国内外を問わず、グローバルな視点での業務が期待されるため、キャリアの幅を大きく広げるチャンスとなるでしょう。
こうした背景から、海外進出が進む企業にとって、生産技術職はますます欠かせない存在となっています。
生産技術職のキャリアプランを一緒に描こう!ものづくりのプロに相談
生産技術職としてのキャリアをどう描いていくかは、あなたの未来を大きく左右する重要なポイントです。ものづくりの現場で培った経験や知識を活かし、将来どのようなステップを踏むのかを計画的に考えることで、より充実したキャリアを築くことができます。
私たちは、生産技術職ならではのキャリアアップ方法や目指すべき目標について、プロの視点からアドバイスを提供します。一人では見つけにくい新たな可能性や方向性を、一緒に見つけていきましょう!ぜひお気軽にご相談ください。
ものづくりのプロたちと共に、あなたの未来を描いてみませんか?