VRはゲームやアミューズメントパークだけでなく、今やモノづくりの分野にもその技術を応用しようという動向があります。
VRがエンジニアの働き方を大きく変えることは、決して遠い未来ではありません。
本記事ではVR技術の動向とモノづくり分野における未来予想について紹介します。
目次
1.VRとは?
VR(Virtual Reality)を直訳すると、「仮想現実」となります。
一般的には、コンピュータで作られた3D空間をあたかも現実世界のように疑似体験できる技術のことを言います。
VRの起源は、1960年代に米国のアイバン・サザランド博士らが開発した頭部装着ディスプレーです。視覚全体をディスプレーで覆い、ヘッドフォンで音声を流すことで、あたかも別世界に来たかのような感覚を味わえる装置として注目を集めました。
1986年、米航空宇宙局(NASA)は宇宙飛行士が宇宙空間に行かずとも訓練ができるようにと、宇宙空間を再現するVR技術の研究・開発を行いました。
実用レベルのVRとしては、これが初と言われています。
その後も様々なメーカーがVRの研究・開発を推進してきましたが、世間一般に認知されるきっかけとなったのは、ゲームや映画、アミューズメントパークといったエンターテインメント分野へのVR技術の進出です。
2016年にSONYが発売したVRゲーム専用端末「PlayStation VR」は、家庭でも気軽にVRを楽しめる端末として、全世界で累計販売台数300万台を突破しました。
日本にも「東京ジョイポリス」や「VR PARK TOKYO」など、VRアトラクションを体験できる施設が多数存在します。
今や「VR」という言葉は多くの人々に認識されており、普段の暮らしの中においても身近な技術となりつつあります。
2.VR技術の現在とその動向
近年、VRはエンターテインメント分野以外にも、様々な分野で活用されています。
医療分野では、手術シミュレーションとしてVRが使用されています。
不動産分野では、物件の内見にVRが活用されています。
VRプラットフォーム提供企業「NER*VE」は、離れた物件の内見を可能とする「VR内見」を提供しています。
これを用いることで、顧客は実際に物件まで足を運ばずとも、あたかも物件の中にいるような感覚で内見をすることが可能です
上記はほんの一例であり、他にも建築・教育・自動車販売・宇宙開発など、様々な分野でVRの技術が活用されています。
IDC Japanの調査では、全世界のVR/AR関連サービスの支出額は、2017年時点の140億円から、2022年には2,087億円に達するとされています。
今後も多くのメーカーや団体がVR開発に参入し、様々な分野でVRが普及していくと予想されます。
3.VRでモノづくりはどう変わる?VR技術の未来予想
それでは、モノづくりの分野はVRによってどのように変わっていくのでしょうか?
日本国内において、モノづくりにVRを応用しているメーカーは現時点では少数ですが、今後VR市場が拡大していくことで、着実にその数は増えていくことが予想されます。
ここではVRをモノづくりに応用することで、どのようなことが可能になるのかを紹介していきます。
①製造現場や保守・点検現場におけるVRを用いた実践教育
製造現場における多くの作業は、作業者の熟練によりサイクルを短縮することが可能です。また個々の作業手法の違いにより、完成した製品の出来栄えにばらつきが発生してしまうことがあります。
VRを用いれば、製造現場における標準作業を訓練することができます。
これにより、サイクルの短縮や製品のばらつきの低減を図ることができます。
また保守・点検の現場においても、VRによる訓練を導入することで、未経験な不具合等に対してスムーズに対応できるようになります。
実践教育が難しいような危険な現場においても、VRを用いることで事前に教育を実施することが可能です。
②使用環境や実作業に適した具体的な設計
VRを用いることで、製品のサイズ感や部品同士の位置関係を視覚的に把握しながら設計を行うことが可能となります。
例えば、実際に製品が使用される環境をVRで再現することで、製品のサイズや形状が適切であるかどうかを直感的に理解することができます。
また、VR上で実際に製品を組み立ててみることで、部品同士の干渉等がないかどうかを即座に判断することが可能です。
③試作品完成前の製品レビュー
多くのメーカーのモノづくりにおいて、試作品を製作し、有識者たちがそれを見てレビューを行うというプロセスがあります。
しかしレビューの結果、試作品に欠陥があった場合、再度試作品の製作が必要です。
これを繰り返すと多くの時間とコストが無駄になってしまいます。
しかしVRを用いれば、実際に試作品を製作する前に3Dデータを見てレビューを行うことが可能です。これにより、試作にかかる時間とコストを低減することが可能となります。
④製造現場のラインレイアウト検討
モノづくりの生産性を上げるには、製造現場のラインレイアウトの効率化が重要です。
しかし、製造現場のラインレイアウトは、一度構築してしまうと再構築が非常に困難です。
そこでVRを用い、仮想のラインレイアウトを構築し、事前に生産効率や作業性を評価します。これにより、何度でもラインレイアウトを作り、改善していくということが可能となります。
⑤自社にいながら取引先メーカーの製造現場を視察
新規取引先メーカーを開拓する際には、取引先メーカーの製造現場を視察することが必須です。
しかし、大きな工場ほど地方に建てられていることが多く、実際に出向くには時間もコストもかかります。
そこでVRを用いることで、実際に取引先メーカーの製造現場に出向かずとも視察を行うことが可能となります。
4.まとめ
上記で紹介したように、モノづくり分野にVRが普及することで、大幅なリードタイム短縮やコスト削減が期待されます。
それに伴い、モノづくりに携わるエンジニアの働き方が大きく変わっていくことも予想されます。
このような変化に対応するために、エンジニアはVR技術の今後の動向に目を向け、最新の技術に対して常にアンテナを張り巡らせておくことが重要です。
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