製造業をはじめあらゆる職場で必要とされる品質管理と品質保証という職種。
品質管理と品質保証という仕事は製造業において、不良品への対応やクレーム処理といった、ストレスのかかる大変な仕事といった何となくのイメージはできる方が多くいるとかと思います。
しかし一方で、
・品質管理と品質保証って、どんな違いがあるの?
・品質管理と品質保証って、仕事の向き不向きは同じなの?それとも違うの?
といった疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、品質管理と品質保証の違いを中心に向いている人の共通点と異なる点、転職のポイントについて紹介していきます。
品質管理と品質保証の仕事内容とは
品質管理の仕事内容
品質管理とは、「製品の品質を管理する仕事」のことを指します。
品質と一言に言っても、その対象は、自動車や航空機、産業用機器や医療用機器まで様々です。また、業務品質という言葉もあるほど、品質という言葉は、一般的に広く使われる用語です。
製造業における品質管理とは、製造や組立で作られた製品の品質が確かなものであることを検査で検証し、問題ないということ判断するための一連の工程を管理することです。これが、品質管理の担当者に求められる仕事です。
品質保証の仕事内容
品質保証とは、「製品の品質を保証すること」を指します。
ものづくりを行っている企業は、製造する製品に品質基準を定めており、これを満たすように日々製造業務を行っています。品質基準には規格に基づいて設定されているものもありますし、企業独自で定めているものもあります。
品質保証は、製品の品質基準を満たしているか確認したり、出荷後の製品の品質を保証したりすることが主な業務となります。
どちらの仕事も、製品の質を守る重要な役割
ここまでの仕事内容を見てきた通り、「品質保証」と「品質管理」のどちらも、お客さんにより良い品質の製品を届けるための仕事です。
どの企業においても品質の高い製品を作ろうと努力しています。しかし、すごく低い確率ではあるものの不良品は必ず発生します。大量生産をしている大企業での工場ではなおさらです。
不良品が発生してしまった場合、「品質管理」と「品質保証」でその対応に違いがあります。
次の章では、「品質管理」と「品質保証」の具体的な違いについてみていきましょう!
品質管理と品質保証の違い
【ポイント①】製品に携わる工程や業務範囲の違い
品質管理と品質保証の違いについて、ポイントの1つ目は、製品に携わる工程や業務範囲の違いです。
品質管理では、生産ラインの品質、つまり工場内で出荷するまでの製品の品質を管理することが一般的です。生産ラインの品質管理では、工程管理、品質検証、品質改善の3つの管理を通じて、製品の品質を管理しています。
具体的には、品質をつくり込むために、
・確かな品質をつくり込める人を育成するための教育訓練
・設備能力を維持するための管理
を行い、工程が常に正常な状態であるように管理します。
一方、品質保証では、製品の企画から資材調達・生産・出荷・アフターサービスまでが品質を保証する工程や業務範囲となります
具体的な例としては、製品品質において顧客からクレームが発生した場合は、品質保証の部門が顧客に対して対応を行うことが挙げられます。
この場合、品質保証の部門では、顧客への窓口となり、営業部門などと連携して顧客の声を集め、製造工程などを中心に品質トラブルが起きていないかチェック・管理を行います。そして、品質に問題があったのかどうか判断し、顧客に報告します。
その後の品質トラブルがあった場合の対応や定期的な顧客への経過報告も行います。最終的に是正完了の報告までを含めて、品質保証部門が中心となって対応にあたります。
【ポイント②】責任の対象の違い
品質管理と品質保証の違いについて、ポイントの2つ目は、どこに責任を持っているかという点です。
品質管理では、製品が正しく作られているか、不良品が混ざっていないかという、製品の品質基準に責任を負います。
一方、品質保証では、製品企画時の資材調達先や、製品が売れた後の返品やクレームなど顧客に対して責任を負います。
品質管理や品質保証の仕事に向いている人~共通点と異なる点~
ここでは、品質管理や品質保証の仕事に向いている人について、共通点を2つと異なる点を3つ紹介していきます。
まず、共通点は、以下の2つです。
① 細かな作業が好き
② 論理的
細かな作業が好き
品質管理の仕事では、生産ラインでの製品検査やその結果のデータ収集などコツコツと分析を繰り返します。細やかな視点で結果を分析することが必要になります。
また、品質保証の仕事においても、不良品の原因調査として過去の製造履歴データを調べたり、実際に不良品に近い状態を再現した検証を行いそのデータをまとめたりといった細かい作業が必要になります。
論理的
品質管理や品質保証では、論理的にものごとの状況を整理できる人に向いています。
例えば、不良品の原因調査は、〇〇という不良が起こっているということだけでなく、なぜその不良が起こったかということを推測し検証していく作業を行います。
このとき、「△△だからこういう不良が起こっている可能性が高い。」と冷静に筋道を立て、問題を解決していきます。
パズルやゲームなど問題を解く感覚に近く、これらが好きな人は向いていると考えられます。
次に異なる点は、以下の3つです。
① 判断力と忍耐力
② コミュニケーション
③ 製品との関わり
① 判断力と忍耐力
<品質管理>
品質管理の仕事では、冷静にものごとを判断できる能力が必要とされます。
そのため、工場の生産ラインで発生した不良品の原因を分析するときに、客観的なデータや事実に基づいて判断できる人は、品質管理の仕事に向いています。また、不良品への対応として作業手順や工程を改善するときに、既存の方法に固執せずに柔軟に新しいアイデアや提案を受け入れられる人にも品質管理の仕事が向いていると考えられます。
<品質保証>
品質保証の仕事では、品質管理とは違い、忍耐力が求められる場面が多くあります。
そのため、不具合の起きた製品の検査やテストを行うときに、細かい部分まで見逃さずに注意深くチェックできる人は、品質保証の仕事に向いています。また、顧客からのクレームや問い合わせに対応するときに、感情的にならずに冷静に時間をかけて話を聞き、適切な解決策を導こうと努力ができる人にも品質保証の仕事が向いていると考えられます。
② コミュニケーション
<品質管理>
品質管理の仕事では、製品に関わる担当者とコミュニケーションを取っていきます。
製品に関わる担当者は幅広く、企画・開発・設計といった前工程の部門から、製造・生産技術といった製造部門まで含まれます。製造現場で品質を高めていくために、人と人との綿密なコミュニケーションが取れる方に向いている職種と言えます。
<品質保証>
品質保証の仕事でも、製品に関わる関連部門とコミュニケーションを取っていきます。
企画・開発・設計といった前工程の部門の他、製造・生産技術といった製造部門でも、品質トラブルが発生した場合の品質基準のチェックを行います。そのために、品質管理とは違い、他部門との綿密なコミュニケーションが必要となる場合が多いです。
また、それに加え、品質保証の仕事では、市場で製品不具合が発生した場合に、顧客のもとに営業と同行し、顧客の対応をする場合もあります。
したがって、品質保証を行う上では、普段から周囲の人との関係性を大切にし、コミュニケーションをとることが重要と言えます。
③ 製品との関わり
<品質管理>
品質管理では、工程管理や品質改善などを行う中で、製品に直接関わることができるのが特徴です。
直接作るということは行いませんが、良品、不良品の見極めや不良品の原因追求などを通じて、完成品を扱う場面がたくさんあります。
品質管理の仕事は、特にものづくりの現場に直接関わりたい方に向いている職種と言えます。
<品質保証>
品質保証では、品質管理で関わった工程以外の部分で製品と関わることになります。
すなわち、自社で新しく商品をつくる際、商品の企画段階から携わるケースがあります。
例えば、原材料の調達方法、製造方法、パッケージのデザイン、出荷方法、流通経路などです。
「製品の品質基準を満たすものをつくる」という観点から、その製品に関するありとあらゆることに関わることができます。
そのため大変な苦労が伴うこともありますが、全工程に関わる品質保証だからこそ、無事に製品として販売・出荷されたときは、大きな喜びを感じることができます。
品質管理や品質保証におすすめの資格・スキル
品質管理検定(QC検定)資格が有利
品質管理の資格には、日本規格協会グループが主催する品質管理検定(QC検定)と呼ばれる資格があります。 この資格は品質の管理を正確に行えるということを示す資格です。品質の管理に関係する知識を学ぶだけではなく、仕事の中で発生した問題を積極的に解決できる力を身につけることを目的としています。
試験は3月と9月の年2回実施されており、資格には1~4級までのレベルがあります。品質管理手法を問われるのは、3級からです。品質管理の仕事に従事している方や経験されてきた方は、3級より上から受験をすると良いでしょう。
「資格なんか持っていても意味なんて無いのでは?」と思われる方もいるかもしれません。確かに資格を持っているだけでは意味がありませんが、同じレベルの品質管理担当者がいた場合、資格を持っている担当者と持っていない担当者であればどちらにお願いしたいかと考えると答えは明確ですよね。
是非、機会があれば、資格取得も検討されることをおすすめします。
「ISO9000規格」の経験が強み
ISO とは、ISO(国際標準化機関)が定めた品質マネジメントシステムに関する国際規格群です。
ISO9000は、品質保証に関する要求事項を標準として規格化したものであり、この規格に基づいて製品(サービス)の供給企業が社内で品質管理の仕組みを自己評価したり、顧客や第三者機関が供給者の品質マネジメントの状況を審査したりします。
ISO規格は、認証時に審査を受ける他、認証後にも1年に1回の維持審査、3年に1回の更新審査が行われます。
具体的には、顧客や法令等の要求事項を満たす製品やサービスを提供できているかどうか、品質マネジメントシステムの有効性や改善状況を評価できるかどうかなどが審査されます。
そのため、これらの審査に対応した経験がそのまま強みとして評価されることになります。
「TPS(ジャストインタイム生産方式)」の経験が強み
TPSとはToyota Production Systemの略で、「トヨタ生産方式」を指します。 生産ラインのムダを徹底的に排除するために確立された生産方式です。 「ジャストインタイム生産方式」とも呼ばれ、「必要なもの」を「必要な量」だけ「必要な時」に、供給する考え方です。
TPSの考え方はいくつかありますが、その中に「品質の異常を即座に見つけて、設備を止めること」というものがあります。
つまり、品質の作り込みを行い、品質の異常がすぐに分かることを意味し、この経験が強みとして評価されることがあります。
自動車業界では「IATF認定」の経験が強み
IATF 16949は自動車産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格です。世界の多くの自動車メーカーが、自動車部品のグローバルな調達基準として採用しています。
IATF 16949は、ISO 9001をベースとして、自動車産業固有の要求事項が加わっています。さらに、顧客が指定する個別の要求事項も加わり、3層構造となっています。
IATF 16949の認証取得にあたっては、すべての要求事項に対応した品質マネジメントシステムの構築が必要となります。
上記の経験が強みとして評価されることがあります。
品質管理や品質保証に転職するポイント
異業種から転職するには、なぜ業界を変えたいかを伝える
異業種から転職するには、なぜ業界を変えたいかを伝えることがポイントとなります。
例えば、
「製造業で働いてみたくなったきっかけ」
「製造業に対しての自分の強み」
「製造業に自分がマッチしている理由」
など、その業界で自分が働いていることがプラスになることを人事や面接官にアピールしましょう。
異職種から転職するには、なぜその職種に携わりたいかを伝える
異職種から転職するには、なぜその職種に携わりたいかを伝えることがポイントとなります。
例えば、
「メインの職種は違うけど、携わりたい職種での仕事を少し経験し自分に合っていた」
「携わりたい職種に憧れがあり、自分で勉強していた」
「携わりたい職種で、自分の強みが発揮できるかもしれないと感じている」
など、その職種で自分が働いていることがプラスになることを人事や面接官にアピールしましょう。
航空自衛隊に入隊し、航空機の整備士として救難ヘリコプターの整備現場で働いていた20代前半の男性。
「航空業界のスペシャリスト」として働きたい、という想いから転職活動をスタートすることに。可能性をあきらめずに、機体の品質保証職へ転職成功。
【まとめ】製造業を支える縁の下の力持ち
本記事では、品質管理と品質保証の仕事内容や違い、向いている人、おすすめの資格やスキル、転職するポイントなどについてご紹介しました。
品質管理と品質保証は、製造業を支える縁の下の力持ちとして、製品の質を守る重要な役割を担っています。どちらも共通する点もありますが、携わる工程や責任の対象に違いがあります。
各業界のメーカーのホームページを見ると、そのメーカーにおける品質管理や品質保証の仕事内容が具体的に解説されていたりもします。品質管理や品質保証に興味がある方は、この記事を参考に、それぞれの仕事の違いも意識して、ぜひチェックしてみてください。
また、気になる企業が見つかった方は、まずは「みらいキャリア」のキャリアアドバイザーへご相談ください。「みらいキャリア」のキャリアアドバイザーが徹底サポートします。製造業の求人情報や市場動向のご紹介、履歴書や面接のアドバイスも行っております。
それでは、ここまでご覧いただきまして、ありがとうございました!
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